名古屋の和菓子屋の店先に、ゴツゴツしたさつまいもだらけの蒸し菓子が並んでいる——それが鬼まんじゅうです。名古屋で育った人には「おばあちゃんの家にいつもあったおやつ」。さつまいもが穫れる秋は、一年でいちばん出回る季節です。

この記事では、農林水産省がまとめた郷土料理データベースの記述をもとに鬼まんじゅうの正体を整理したうえで、公式情報で鬼まんじゅうの取り扱いを確認できた名古屋市内の4店を、住所・営業時間つきで紹介します。値段が公表されている店は金額も載せました。

この記事のポイント

  • 鬼まんじゅうは戦中・戦後の食糧難から生まれた郷土菓子。角切りさつまいもの角が鬼のツノや金棒に見えることが名前の由来といわれます。
  • 秋が旬だが、実は通年のお菓子。和菓子屋には一年中あるため、季節を外しても買えます。
  • 値段は公表している店で1個200円(税込)。覚王山・梅花堂は鬼まんじゅうが朝9時から、中村区・とう吉饅頭は売り切れ次第終了です。

鬼まんじゅうとは?名前の由来は「鬼のツノ」

結論から言うと、鬼まんじゅうは角切りのさつまいもを、小麦粉と砂糖を混ぜた生地に入れて蒸した菓子です。農林水産省の「うちの郷土料理」によれば、伝承地域は名古屋市を中心に愛知県内全域。主な使用食材はさつまいもと小麦粉と記されており、材料の少なさがそのまま素朴さになっています。

名前の由来もそこにあります。生地から突き出たさつまいもの角がゴツゴツと見える様子が、鬼のツノや金棒を想起させたことからこの名がついたといわれる、と同省は記しています。地域によっては「芋ういろ」「芋まん」「芋まんじゅう」とも呼ばれ、名前が一つに定まっていないところにも、家庭の菓子として広まった歴史がにじみます。

「護国芋」から生まれたという説

興味深いのが誕生の背景です。同省の解説によると、鬼まんじゅうは戦中・戦後の食糧難の時代に、比較的手軽に手に入ったさつまいもと小麦粉でつくられ、米の代わりの主食として広まりました。おやつではなく、主食だったわけです。

さらに戦時中は、味より収穫量が優先され「護国芋」という品種が生産されていました。紅あずまや紅はるか、安納芋のような甘くなめらかな芋とは違い、水っぽくて旨味に乏しい芋だったため、これをどうにかおいしく食べようという工夫から鬼まんじゅうが誕生したのではないかといわれている、と記されています。素朴な見た目の裏に、そういう時代の知恵が入っている菓子なのです。その後、高度経済成長期には農家で腹持ちのよい安価なおやつとして重宝され、定着していきました。

秋の菓子? それとも通年?

どちらも正解です。同省は「さつまいもの収穫期である秋につくられることが多い」としつつ、和菓子屋には必ずと言っていいほど置いてあるため一年を通して食べられていると補足しています。つまり秋は旬でいちばん出回る時期ですが、「今年は買いそびれた」と諦める必要はありません。

食感は、もっちりと重量感があって非常に腹持ちがよいのが特徴。近年はふんわりした蒸しパンのような生地のものや、さつまいもの代わりにりんごの角切りを入れたアレンジもあります。また和菓子屋のものは、さつまいもがあらかじめ蜜煮されているものが多いとされ、家庭でつくる素朴なものとは甘さの出方が違います。食べ比べると、その差がはっきり分かります。

覚王山 梅花堂|鬼まんじゅうは朝9時から、電話確認が確実

名古屋で鬼まんじゅうといえば、まず名前が挙がるのが覚王山の梅花堂です。名古屋市観光情報の公式サイト「名古屋コンシェルジュ」も「名古屋で鬼まんじゅうと言えば梅花堂」と紹介しており、看板商品は色が黄色く、いもが大きく、自然な甘さが魅力だと説明されています。

ここで押さえておきたいのが時間です。店の営業開始は8時ですが、鬼まんじゅうが並ぶのは9時からと明記されています。さらに定休日が不定休で、同サイトには「不定休の為、ご予約、ご来店の際はお電話にてご確認ください」という案内も出ています。遠方から向かうなら、電話を一本入れてから出るのが結局いちばん早道です。

項目内容
店名梅花堂(ばいかどう)
住所〒464-0821 名古屋市千種区末盛通1-6-2
アクセス地下鉄東山線「覚王山」駅下車、徒歩2分
営業時間8:00〜17:00(ただし鬼まんじゅうは9:00から)
定休日不定休(来店・予約前に電話確認を推奨)
駐車場無料駐車場あり(2台)
TEL052-751-8025
価格公式情報には記載なし

覚王山 吉芋|1個200円、松坂屋と名駅のデパ地下でも買える

同じ末盛通に本店を構えるさつま芋菓子の専門店が、覚王山 吉芋です。芋けんぴ「吉芋花火」で知られる店ですが、公式のお品書きに鬼まんじゅうが載っており、値段まで公表されています。公式の説明は「細かいお芋がぎっしり詰まったお饅頭。名古屋の郷土菓子です」。1個200円、消費期限は当日で、二個入り・三個入り・五個入りでの販売になります。

この店の強みは、デパ地下で買えることです。公式の店舗案内には本店のほか、松坂屋名古屋本館B1、ジェイアール名古屋タカシマヤ、東区の徳川店、イオンモール岡崎が載っています。栄や名駅の乗り換えついでに寄れるのは、朝いち勝負の個人店にはない利点です。なお公式は、他社ショッピングサイトでの高額転売に対してネット上の公式販売は自社の公式オンラインショップのみと注意喚起しています。

店舗住所営業時間 / 定休日 / TEL
本店(覚王山)〒464-0821 名古屋市千種区末盛通1丁目1番地 弘法屋ビル1階10:00-18:00 / 無休(年末年始を除く)/ 052-763-2010
松坂屋名古屋本館 B1〒460-8430 名古屋市中区栄3丁目16-110:00-20:00 / 元旦のみ(百貨店営業日に順ずる)/ 050-5785-1297
ジェイアール名古屋タカシマヤ〒450-6001 名古屋市中村区名駅1-1-410:00-20:00(時期によって変更あり)/ 元旦のみ / 052-566-8592
徳川店〒461-0025 名古屋市東区徳川1丁目10-3511:00-17:00 / 木曜日・年末年始 / 052-935-3936

本店には参道側に併設駐車場が3台分あります。梅花堂と吉芋本店はどちらも末盛通。覚王山まで足を運ぶなら、両方の鬼まんじゅうを買って食べ比べるのが、いちばん贅沢な使い方です。

とう吉饅頭|昭和10年創業、看板は蜜芋の鬼まんじゅう1個200円

名駅から西へ、中村区大宮町にあるのが昭和10年創業のとう吉饅頭です。公式サイトの「名物」ページの筆頭に鬼まんじゅうが置かれ、1個200円(税込)と明記されています。看板商品として打ち出している一軒です。

公式の商品説明が具体的で、狙いがよく分かります。大粒の芋を使い、甘みが濃い蜜芋になるよう芋の中心部分を使用。長い時間をかけて蒸すことでさつま芋本来の甘みを引き出し、その分だけ生地は甘さ控えめにあっさり仕上げているとのこと。「鬼ヶ島をイメージした」という説明もあり、芋を主役に据えた設計です。営業時間は平日・土曜が9:00〜18:30と長めですが、公式に「商品が売り切れ次第、営業を終了する場合もございます」と但し書きがあります。閉店時刻まで開いている保証はない、ということです。

項目内容
店名とう吉饅頭
住所〒453-0821 愛知県名古屋市中村区大宮町3-34
アクセス「中村公園駅」より徒歩9分
営業時間平日・土曜 9:00〜18:30/日曜・祝日 9:00〜18:00(売り切れ次第終了の場合あり)
定休日火曜日(お盆・年末年始などの催事期は営業)
駐車場あり(店舗裏手に2台)
TEL052-471-6864
鬼まんじゅうの価格1個200円(税込)
創業昭和10年

山田餅本店|瑞穂通の餅屋、桜山駅から徒歩3分

瑞穂区・瑞穂通商店街にある山田餅本店は、毎朝つきたての餅を出すことを看板にしている店です。公式サイトの「定番の和菓子」に鬼まんじゅうが並んでおり、草餅や大福、おはぎと同じ並びで扱われています。

公式の商品説明では、さつまいもをふんだんに使っている点に加えて「小麦を使ったつなぎの皮もお楽しみください」と、生地のほうにも触れています。鬼まんじゅうは芋ばかりが注目されがちですが、この店は皮も味わってほしいという立場、というわけです。創業は昭和2年、初代店主が名古屋市昭和区で開店し、昭和18年に名古屋市民病院の設立にともなって現在の瑞穂通商店街へ移ってきました。定休日が火曜と水曜の連休なので、そこだけ注意してください。

項目内容
店名山田餅本店
住所〒467-0806 名古屋市瑞穂区瑞穂通1-18
アクセス地下鉄桜通線「桜山駅」5番出口から徒歩3分(名古屋市博物館前)
営業時間午前9時〜午後6時
定休日毎週火曜日・水曜日
TEL052-841-1501
価格公式サイトに記載なし
創業昭和2年(昭和18年に瑞穂通へ移転)

買うときに失敗しないための3つのコツ

鬼まんじゅうは日持ちのしない蒸し菓子です。地元で買い慣れている人ほど、次の3点を守っています。

  • 個人店は午前中に動く…梅花堂は鬼まんじゅうが9時から、とう吉饅頭は公式に「売り切れ次第終了の場合あり」と明記されています。確実に買いたいなら午前です。
  • 行く前に電話する…梅花堂は不定休で、公式観光情報にも電話確認の案内が出ています。1本の電話が空振りを防ぎます。
  • 時間が読めない日はデパ地下へ…吉芋なら松坂屋名古屋本館B1やジェイアール名古屋タカシマヤで、百貨店の営業時間内に買えます。

もし固くなってしまっても、捨てるのはもったいない。農林水産省の解説では、ラップをかけて電子レンジで20秒から30秒ほど温め直すと、できたてのような食感を楽しめると紹介されています。翌朝のおやつとして食べ切るなら、この方法が確実です。

よくある質問

鬼まんじゅうは名古屋だけのお菓子?

愛知県の郷土菓子で、農林水産省は伝承地域を「名古屋市を中心に県内全域」としています。ただし愛知だけのものではなく、岐阜県観光公式サイトにも県内の鬼まんじゅうが特産品として掲載されており、東海地方で広く親しまれているお菓子です。

値段はいくらくらい?

公式に価格を出しているのは2店で、とう吉饅頭が1個200円(税込)、覚王山 吉芋が1個200円です。梅花堂と山田餅本店は公式サイト・公式観光情報のいずれにも価格の掲載がありません。ネット上には金額を載せた記事もありますが、値上げが続く時期に出所の分からない古い数字を持ち歩くと当てが外れます。この2店については店頭または電話で確認してください。

なぜ「鬼」なの?

角切りにしたさつまいもの角がゴツゴツと突き出て見える様子が、鬼のツノや金棒を想起させたから、といわれています。鬼が出てくる行事や伝説と直接の関係があるわけではなく、見た目からついた名前です。とう吉饅頭のように「鬼ヶ島をイメージした」と説明する店もあります。

家でもつくれる?

つくれます。1cm角に切ったさつまいもを、小麦粉と砂糖を混ぜた生地に入れて蒸し器で蒸すという工程で、農林水産省のページには分量つきの家庭向けレシピが掲載されています。学校給食の献立に取り入れたり、さつまいも栽培の学習と関連付けて調理実習をおこなったりして伝承に努めている地域もあると紹介されています。

まとめ|覚王山でハシゴするか、デパ地下で確実に買うか

鬼まんじゅうは、戦中・戦後の食糧難のなかで生まれ、農家のおやつとして定着し、いまも名古屋の和菓子屋の店先に当たり前に並んでいる菓子です。派手さはありませんが、さつまいもの旬に食べる一個は、名古屋の秋そのものの味がします。

作戦は2つ。末盛通の梅花堂と吉芋本店をハシゴして食べ比べるか、時間が読めない日は松坂屋・名駅タカシマヤの吉芋で確実に押さえるか。じっくり選ぶなら、中村区のとう吉饅頭や瑞穂通の山田餅本店まで足を延ばす価値があります。名古屋の郷土菓子をもう少し掘るなら、名古屋ういろうの名店・ブランド比較や、甘味をはしごする大須食べ歩きグルメのモデルルートもどうぞ。さつまいもそのものを掘りたくなったら愛知の栗拾い・芋掘りスポットが使えます。

※記載内容は2026年8月17日時点の各公式サイト・公式観光情報の情報です。営業時間・定休日・価格・販売状況は変更される場合があるため、来店前にご確認ください。アイキャッチ画像は編集部が生成したイメージで、紹介した各店の商品そのものではありません。

出典

同じ秋の和菓子として、名古屋で買える栗きんとん

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